長松正明プロフィール
ごあいさつ
管楽器による音楽表現のレベルは、演奏技術(音楽性を含む)×楽器の状態としてとらえることができます。この両者は互いに関係し合っていますが、当研究所では楽器の状態をよくすることを主テーマとして40年あまり取り組んできました。そして現在到達した一番基本となる考え方は次のようになっています。
@あらゆる物ごとは単独に存在するのではなく、いろいろの関係性を持って存在している。
A取り組む物ごとに対しては、それを成立させている関係性を読み取る。
Bそして、よりよくできる可能性を考え、それを実現することを目的とする。
では、この考え方で「管楽器」を例として述べてみます。
この場合、どのようにして音が出るのかが基本となり、各部の働きと互いの関係性が表に現れてくるようにします。管楽器の発音は、管体(木や金属)によって囲まれ形づくられた気柱(管内空気)が振動体となり、吹き込まれる連続的な息がリード(植物、唇、エアー等)による弁の開閉によって区切られてパルス化し、これが気柱と共振し、その一部が管体の開口端より大気中に音として放射されるという関係が成り立つことによっておこります。よってリードと気柱は連成振動系を形成する関係にあります。
そして、これをよくする方法は、大きく分けるとリードをよくする方法と管体をよくする方法とになります。
次に、このうちのリードについて取り上げてみます。
よいリードはよい材料をよい形(寸法)に削り上げてできると言えます。
よい材料は弾力性に富んでおり、それは材質の充実度が高いということであり、ダンチク(イネ科の植物)の栽培において光合成率が高いことによって得られます。
そして、ある1枚のリードが用意されたとして、そのリードはいつもある一定レベルの働き方を保っているのかという問題があります。
そのリードを水道水(塩素を含む)に浸してから吹いたときと、浄水器を通した水道水(塩素を含まない)に浸してから吹いたときと吹き較べてみると、前者では鳴り難く、後者では鳴り易いとなります。
この意味するところは、リードが振動するとき、リードの帯びている活力の有無がその働きに影響を与えるということになります。
これはリードに限らずほとんどの物ごとに言えるのではないかと思われます。そのようなわけで当所では、単なる材質や形だけでなく、活力の面も重視して物づくりを行っており、「よりよい音づくり」を進めることによって役立ちたいと考えております。
長松管楽器研究所 代表 長松正明
長松 正明 (ながまつ まさあき)
昭和39年東京藝術大学音楽学部器楽科卒業
クラリネットを三島勝輔氏、千葉国夫氏に師事
群馬交響楽団、山口巌とミッドナイトスターズ、長松正明とジャストフレンズ等を経て現在、長松管楽器研究所を主宰
著書に『リード制作機器と周辺技術』(日本管打・吹奏楽学会)がある。
日本管打・吹奏楽学会アカデミー賞受賞
クラリネット協会賞受賞
日本管打・吹奏学会会員
日本クラリネット協会会員